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東京国立博物館で「生誕150年 黒田清輝 ─日本近代絵画の巨匠」が開幕 初期のフランス留学時代から絶筆までの画業と生涯を辿る

Category: 展覧会

黒田のアトリエの再現(中央)。周囲には焼失した「昔語り」の下絵とデッサンが並ぶ

上野・東京国立博物館で本日より始まった「生誕150年 黒田清輝 日本近代絵画の巨匠」展。1866年、鹿児島に生まれた黒田清輝。18歳でフランスに留学し、師ラファエル・コランや同時代のフランス絵画に刺激を受けながら制作に取り組み、サロンでの入選を果たします。帰国後は東京美術学校西洋画科の講師となり、日本洋画界の発展に大きく寄与するとともに、日本美術の国際的認知に向けて制作に励みました。東京国立博物館で開催される黒田の大回顧展としては初の機会となる同展。「読書」「湖畔」など誰もが知る代表作はもちろん、初期から晩年までの黒田作品200点が一堂に展示し、その画業と生涯に迫ります。

黒田のフランス留学時代の師、ラファエル・コラン作品が並ぶ

同展は黒田作品だけでなく、黒田と同時代のフランス絵画たちも見どころのひとつです。外光派アカデミスム、バルビゾン派、自然主義、印象派など、様々な絵画の流派、動向を貪欲に吸収、研究し、日本に紹介していった黒田ですが、展覧会ではオルセー美術館所蔵から師ラファエル・コランやミレー作品が特別出品。またモネをはじめとする印象派の画家たちや、壁画家シャヴァンヌの作品も展示されています。

「読書」1891年 東京国立博物館蔵

会場風景

18歳で法律を学ぶためフランスに渡った黒田ですが、画家修学を決心した後、法律学校を退学してアカデミーのラファエル・コランの教室で指導を受けます。恋人のマリア・ビヨーをモデルに描いた「読書」をサロンに出品、見事入選を果たすなど、着実に研鑽を積んでいきました。

重要文化財「湖畔」1897年 東京国立博物館蔵

「野辺」1907年 ポーラ美術館蔵

1893年、27歳で帰国。印象派風の明るい光の表現を取り入れた黒田の画風は、日本の洋画界に新風を吹き入れました。1896年には東京美術学校西洋画科講師となり、西洋画の普及に邁進。また美術団体「白馬会」を結成するなど、日本美術のアカデミズムの礎を築きました。

会場風景

帰国後の黒田を悩ませたのが、封建的な日本社会の現実でした。第4回内国勧業博覧会に「朝妝」を出品するも、女性の裸体が「風俗を乱す」として非難を浴びます。その後も第6回白馬会に出品した「裸体婦人像」ほか作品の一部が布で覆われる「腰巻事件」が起こるなど、裸体画をめぐる社会との衝突は晩年まで続きました。

1900年に再渡仏した黒田は、日本洋画の将来のため、より確固たるアカデミズムを確立することが必要だと考えます。帰国後はフランスのサロンに倣った文部省美術展覧会(文展)の開設に尽力。また1920年には貴族院議員に就任し、帝国美術院院長の要職につくなど、美術教育、美術行政において重要な役割を担いました。

会場風景

晩年、多忙を極め大作を制作することが難しくなった黒田は、身近な花々や風景を描いた小品を数多く描き遺しています。絶筆となった「梅林」も25.9×34.8cmの小品で、その筆致からはアカデミズムの形成を目指しながらも、表現主義やポスト印象派など新しい美術の潮流を意識していた黒田の葛藤が感じられるようです。1924年、黒田は58歳でその生涯を終えました。

会場風景

黒田の「朝妝」や舞妓などの群像を描いた「昔語り」、東京駅壁画は残念ながら戦争で焼失してしまいますが、今回の展覧会では映像やパネル、下絵やデッサンなどで作品を紹介しています。

重要文化財「智・感・情」1899年 東京国立博物館蔵

展覧会の最後を飾るのは、代表作のひとつである重要文化財の「智・感・情」。タイトルの「智・感・情」とは、また女性のポーズに込めた意味は何なのか、今日も議論を呼ぶ作品です。裸体画論争を引き起こした黒田にとって、西洋美術の基礎である解剖学を踏まえた人体表現の研究は、日本美術にとって必要不可欠なものでした。黒田はこの作品で、日本人の理想的身体像を表現しようとしたと考えられます。

ミュージアムショップでは、黒田の「湖畔」をイメージしたグッズも。写真中央は「湖畔」のモデル・照子と同じ格好をした「湖畔キューピー」。

日本の近代洋画に大きな足跡を残し、後進の画家たちを導いた黒田。その生涯で黒田が成し遂げたこと、また成し遂げられなかったこととは何だったのか? 黒田という1人の画家の存在がなければ、日本における洋画の歴史は全く別の道筋を辿っていたかもしれません。

展覧会は5月15日まで。この機会にぜひ、巨匠・黒田清輝の画業と生涯をご覧下さい。

特別展 生誕150年 黒田清輝 ─日本近代絵画の巨匠

会期:3月23日(水) 〜5月15日(日)

会場:東京国立博物館 平成館(東京都台東区上野公園13-9)

観覧料:一 般 1,600円 (1,300円)大学生 1,200円(900円)高校生 900円 (600円)

※中学生以下無料 ※()内は20名以上の団体料金 ※障がい者とその介護者1名は無料(入館の際に障がい者手帳などを要提示)

主催:東京国立博物館、東京文化財研究所、朝日新聞社、NHK、NHKプロモーション

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