| 私は1年を通して、公募展を例にすると、すべての団体展を見て歩いています。一つ一つの団体の全室、全作品を見て私なりに「面白い」と思った作品を選び、雑誌「美術の窓」の〈東京都美術館便り〉で紹介しております。昨年を例にとりますと、102団体を見て歩き、2989人の作品を記事にして掲載致しました。
さらに作家は公募団体に所属している方々ばかりではないので、デパートや画廊も丹念に見て回らねば〈現代の日本美術〉を語るわけにはゆきません。1年間に見る作品の数をざっと計算しただけでも、大体6万点以上にのぼります。
これだけ大量の作品を見てくると、現代の日本には、実にさまざまな作品があることが分かります。今の美術界の全体像を見渡すことが出来ます。
有名な人の作品がかえって良くない場合もありますし、値段の高い作品がつまらなく感じる場合もあります。いろいろな角度から見ることで、作品の価値観は変わってくるものです。華やかなステージで派手な衣装を着てリサイタルを開くスター歌手も魅力的なら、地味でも実力があって根強いファンを持つ歌い手も、ひけをとらず魅力的なのです。
雑誌「美術の窓」とあわせて、弊社の代表刊行物である『美術の窓年鑑 現代日本の美術』は、いま述べたように美術界のさまざまな枠を取り払い、実際に見て歩いて良いと思った作品しか掲載しない、そういう価値判断で選んだ自信の秀作集として、美術界では定評をいただいておりますし、いかなる年鑑にも劣らぬ内容であると自負しております。
1993年に『美術の窓年鑑 現代日本の美術』を発刊し、2003年版で11回目を迎えます。おかげさまで「週刊文春」での書評連載では立花隆先生に取り上げられたり、テレビ局の美術番組のディレクターから相談を受けたり、本の購入にみえたりと、各方面からの評価をいただきながら着々と成長して参りました。
しかし、この11年間で時代は大きく変化し、ご存じの通りインターネットの普及によって、情報伝達の形態は急速に多様化してまいりました。インターネットはセキュリティの問題もあり、まだまだ発展途上ともいえますが、即時性、双方向性という点において、旧来のメディアにはない可能性を持っています。インターネットを通じて、これまでの出版活動とはまた異なる分野まで視野を広げ、日本の美術界を盛り上げていく「場」を提供したく、このたびホームページを開設することにいたしました。
このホームページ上では、前述の『現代日本の美術』の掲載作品、作家プロフィール、作品寸評が、英語版も併置して全て閲覧することが出来ます。すぐれた日本の美術作品を、まさに世界に発信するのです。
さらにホームページを通じて、作家へのメッセージ、作品購入についてのお問い合わせなど作家との交流も可能になります。その他、オンラインショップでは弊社の出版物の購入だけでなく、人気作家の小品および版画等の購入も出来ます。
これまでの出版業務で培った基盤と皆様からの信頼を活かし、日本の美術界をさらに活性化させる「場」として皆様にご提供できれば、これほど嬉しいことはありません。皆様に、大いにご活用いただければ幸甚に存じます。 |